アレルギーとわたのふとん

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アレルギーについて、農学博士の奥村康さんにお話をうかがいました。
アレルギーの原因は? どうしたらアレルギーを防ぐことができる?
聴き手は、おたふくわた9代目・原田浩太郎です。

アレルギーとは

——そもそもアレルギーとは何でしょうか?

アレルギーとは、わかりやすくいうと人間の体内にアレルギーの原因(アレルゲン)が入り、
体内で「あれ? こんな形の物質、うちはいらないよ!」と過剰な反応をすることをいいます。
そのアレルゲンですが、喘息患者さんのアレルゲン陽性率を見ると、
原因はやはりダントツがダニと室内塵(ハウスダスト)です。
そしてアレルゲンになりやすい、ダニそのものよりも死骸や糞です。
死骸は腐ると粉々になりますが、その粉々になったものが体内に入って喘息になってしまうのです。
最近は「癒し」が流行り、ペットを飼う人たちも多いですね。
ペットでたしかに癒されるかもしれませんが、アレルギーになりやすいということも事実です。
しかし動物との生活は、気をつかう必要もあるのです。

——ダニというのはどのくらいの種類がいるのですか?

家にいてアレルギーになりやすいダニは主に2種類。コナヒョウダニとヤケヒョウダニです。

——名前だけでかゆくなりますね(笑)

ダニの拡大図をお見せすると皆さん嫌がりますが、
私はもう何年もこれを研究しているので今ではかわいく思えてしまいます(笑)
ダニは人間のフケや垢が好物です。
また、ツメダニというのもいますが、これは肉食性なんです。
そして主食は先ほどの2種類のダニです。
ツメダニはそんなにいないんですが、たまにダニに刺されたという時は、このツメダニが咬んでいるんですね。
しかしツメダニはアレルギー性があまりないので、咬むこと以外は健康に影響ありません。
しかしコナヒョウダニとヤケヒョウダニは咬まない代わりに死骸がアレルギーになりやすい。
なんとも複雑なダニ構図ですよね。

ふとんはダニの楽園

——ダニがゼロになればアレルギー患者の8割が治るとお話されていました。
  しかし絶対ゼロにはなりませんよね。どうしたらいいんでしょうか?

温度20〜30℃くらいで、湿度60~80%。これがダニにとって理想的な環境です。
そしてなんと……それは人間がいいと思う環境と同じなんです。
だから(人間の暮らす環境でダニの存在が)ゼロになるということはありえない。
そしてダニの好物は人のフケ、垢です。
その好物を一番手に入れやすいのが、ふとんやカーペットなどです。
ですからきちんと掃除をすることが重要なんです。

——ふとんですか(苦笑)。
  でも、最初からふとんにダニがいるわけではないですよね……

うーん。少ないことは確かですね。
でも、ペットを飼っていれば抱いたりそこで寝てしまえば、ダニの移住がはじまります。
また人間の衣類やフケ、体などについていればダニは移住をはじめます。
それにダニは隙間とか表面が凸凹している場所、湿気がある場所に住みたがります。
押入れの中に入れていたものを使用する時にも当然いますよね。
畳、ふとん、カーペットはダニにとって最高の場所なんです。

——ということはフローリングの上にふとんを敷いている人は、
  (畳やカーペットに比べて)ダニが少ないということでしょうか?

そうです。
フローリングは繊維のように絡みもなく継ぎ目が深くないので(ダニが)住みにくいです。
でも住みにくいだけでゼロではないですよ。
人間や動物が運んでくれば同じことです。

——やはりマメに掃除することですね。それしかないですか?

そうですね。
ふとんを叩く人がいますがあれはいけません。
叩いたくらいでは小さいダニは除けませんし、死骸や糞が表面に出てくるだけで逆効果です。

——ということはふとんを干すというのは、
  湿気をとるには効果的でも、ダニには関係ない?

そうです。
日干し=ダニが死ぬではありません。
ダニは55℃以上で死滅するので、日干し程度では死にません。
あくまで湿気を取り、ダニを住みにくくするだけです。
干した後、掃除機で片面1分程度吸うのが効果的です。

わたとダニ

——木綿蒲団の側生地というのは他の繊維に比べて太い番手を使用しています。
  そのため縦糸横糸の間隔がわりに大きいので空気や光が入りやすい。
  これは綿にとってはいいんです。
  それで考えたのは糸の間が大きいということは掃除機で吸いやすいのではないかと……

なるほど、そういう考え方もありますね。

——番手が太く糸の間隔が大きいと、ほこりも入りやすいし、ダニも入りやすいと思います。
  その反面、掃除機などをつかえば中綿のダニもほこりも吸い取りやすいので、
  かえって清潔かもしれないと思いました。

そうだと思います。
入りにくい加工をしているものは、入ったら出にくくなるわけですよね。
そういう実験をおたふくわたさんで一度やられてはいかがでしょうか。
環境をそろえるのが大変かもしれませんが、でも理屈で言うとその通りだと思います。

——木綿は昔から体に良いといいますよね。
  やはりアレルギーにも効果的なのでしょうか。

そうですね。
木綿はアレルギーになりにくい物質ですね。
木綿は植物繊維ですよね、植物繊維ではアレルギーになりにくいです。
木綿というのは90%近くがセルロースという物質でできています。
タンパク質もありますが1%程度です。
このセルロースというのは、人間の体のなかに入り込んでもアレルゲンとして働くことはありません。
しかし、外部からタンパク質が入ると自分の体の成分と違うことを感じてアレルギー反応を起こします。
タンパク質はそれぞれにひとつの形を持っているので、自分の体の成分と違うことが簡単にわかってしまいます。
その結果としてアレルギーを引き起こすのです。
ただ牛肉や鶏肉などを食べるという場合は、腸のなかで分解されるのでアレルギーにはなりにくいですけどね。

——つまりアレルギーの患者さんには木綿のふとんがいいというわけですね。

木綿は、アレルギーになりにくい繊維であり、肌にも優しいと思います。
きちんとこまめに掃除をすれば、清潔な繊維だと思います。

——本日はありがとうございました。

(聴き手:原田浩太郎)
※このインタビューは2005年6月に浅草のアサヒビール本社内でおこないました

奥村康さんプロフィール

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奥村康(おくむら・やすし)
農学博士。アサヒフードアンドヘルスケア株式会社に取締役開発部長として勤務するかたわら、
ダニアレルゲンに関する講演なども各地でおこなっている。
※プロフィールはインタビュー時点のものです

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