九代目のひとりごと

3.「第九と九代目」


「第九と九代目」 ことしの12月・・・
私ははじめて第九の合唱に参加する。

ベートーヴェンの「第九交響曲」はクラシックファンではなくても知っている有名な曲である。年末年始になると全国の会場で「歓喜の歌」として多くの観客を魅了する。 第九は特に日本で人気があるがその要因はベートーヴェンの情熱的な音楽が、情が深い私たち日本人の国民性にぴったり合うのではないかといわれている。戦後この曲が日本に広まっときは「西洋から来た希望の歌」として聞いていたに違いない。第九の歌詞は宗教や国などを越えた「愛」を伝える内容となっている。

       抱き合え、幾百万の人々よ!この口づけを全世界に!
            兄弟よ!星空の上に愛する父なる神が住んでいるに違いない
                              (シラーの詩)

しかしどうして私が第九なのかというとこれがまた不思議なきっかけだった。
それは4月のある車内でのこと。私の妻が「あなたはまあまあ声がいいから第九でも やってみれば」と言い出したのだ。音大を卒業した妻が言うので、からかっているのだろうと半分思っていた・・しかし半分「その気」になっていた。「自分が第九を歌う??おもしろいかもしれない」 私はラップやテクノ、ロックなどあらゆるジャンルの曲が好きなミーハーだけに、全く詳しくはないがクラシックのCDも数枚持っているのでアレルギーはない。 早速インターネットなどで調べると沢山の第九の合唱団の紹介が出てくる。 数々調べた結果、自宅から近く、有名指揮者が主宰している第九の合唱団に入会した。 男性陣は40代後半~60代が多く、女性陣は20代から60代とこちらは幅広い。 当初は緊張したが妻がドイツ語の読み方を楽譜にカタカナで書いてくれたおかげで今でも仕事以外はさぼらすに練習に参加している。お風呂の中や車の中、食器を洗いながらも第九を歌う姿を見て家族がおどろいている。「私より歌が好きなのかもしれないわね」と妻は苦笑する。第九は観るより自ら参加して歌う方が断然楽しい。CDを聞いたりピアノに合わせて歌い終えたあと私は必ず涙がこぼれそうになる。歌詞の意味は全ては分からない。しかし練習の際も周りのひとは懸命に歌い、それが終わると何ともいえない満足した顔になっている。

 去年の自分とは違う自分が今年はいるような気がする。とにかく気が引き締まりいろいろな人と一体になって何かをやり遂げているという充実した時間が出来た。 今では夢が広がり再来年春に素人が参加できるベルリンの第九に参加することが目標だ。

 情熱を込めたものには必ず人を歓ばせる何かがある。 私が9月から作りはじめたふとんにも職人や私の情熱が入っていると確信している。 それはふとんを良く見ると随所に出ているはずだ。第九を歌うことで自らのふとん創作にも良い刺激になっていることは嬉しい発見だった。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2003年9月に執筆されたものです

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