おたふくわた復活プロジェクト

5.スーパー職人 丹羽正行氏という人

私が丹羽正行氏と始めてお会いしたのが昨年(※2001年)11月12日の明治記念館で行われていた「全国技能士会」です。先日書いた新聞記者さんが「名古屋から綿に大変詳しい方がいらっしゃる」というので緊張しながら会場に向かいました。お会いした第一印象は非常に姿勢がよく「文化人」のような雰囲気を持った方だと思いました。丹羽氏は寝具業界では有名な方です。現在(※コラム執筆時点)51歳で名古屋の熱田区で寝装品専門店を経営しています。大学では機械工学科を卒業し国家公務員になる予定でしたが、父親の入院をきっかけに天保時代からふとん作りをしているご実家を継ぐことになりました。機械工学科出身らしくふとんを作る為に図面を引いたり、また綿の歴史を調べようとインドをはじめ世界各地を回りそこでふとん製作の研究や歴史ある綿打ち用の弓、糸車、綿繰り機などを集め、それを用いて講演会などでは独学で研究した技術を披露し会場内をいつも沸かせます。そしてふとん作りの技術はこれも独学で上手な職人さんのビデオを繰り返し見て研究したそうです。勉強を始めて数年後には全国大会で優勝しまた「内閣総理大臣賞」も受賞している実力者なのです。

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3月24日都内で行われた 講演会での
丹羽正行氏

そしてどうして綿ふとんが衰退していき羽毛、羊毛が主役になったのかをご自分なりの見解で話されたりして非常に勉強になりました。木綿の歴史、江戸時代に盛んに行われていた綿打ちの話やこれからの綿ふとんのあり方などを丁寧に話していただきました。次の仕事があったため1時間半ぐらいしかお話が出来ませんでしたが、非常に分りやすく上手に話してくれるので全く飽きることなく時間が過ぎました。「木綿、羊毛、羽毛それぞれ長所・欠点がある。だが木綿だけなぜ欠点が強調され羽毛・羊毛の欠点を表に出さないのか憤りを覚える。」と話す丹羽氏の目は輝いていました。そして何よりも綿を我が子のように大切にそして愛情を持って話すその姿に深く感動を受けました。私は丹羽氏と別れた後、新聞記者さんと駅に向かい途中で私が「いやあ大変感動しました。あんな職人さんがまだいるのですね。」と興奮した口調で話したのを今でも覚えています。丹羽氏の影響で私は更に綿の事に興味を持ち本や古い資料を集め勉強をはじめました。

とにかく綿は奥が深く調べれば調べるほど知らなかったことが沢山ありました。そしてその綿の素晴らしさ、美しさを皆さんに少しでも分ってもらおうと思い、このコラムでも出来る限り載せていくように考えています。その後丹羽氏とはメールや電話などでご相談などを受けていただいていたのですが今年の初め仕事で大阪・博多に行くことになり時間を見つけて私は遂に名古屋の丹羽氏に再会することが出来ました。このお話はまた別の機会で書きます。

次は「87歳の大先生」について書きたいと思います。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2001年12月に執筆されたものです

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