おたふくわた復活プロジェクト

11.澤田清子先生と初めての座布団作り

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「さあはじめましょう」と
言われ困る私

主婦、講師、職人、・・・3つの顔を澤田清子氏は持っていらっしゃいます。 澤田氏は東京都江東区北砂にある「さわだや寝具店」でご主人の尚彦氏とおふとんを売っています。澤田氏は寝具1級技能士資格を持ち、また以前ここで書かせて頂いた東京蒲団技術学院 の講師もしていらっしゃいます。そして2ヶ月に1回、地元の江東区で区内の寝具店を営んでいる方たちと「小座ぶとん講習会」を開いています。この講習会は江東区で行われているリサイクル事業への参加と木綿ふとんの特長である「打ち直し」を幅広い世代に普及するために古綿を使った座ぶとんづくりしています。

私は江東区民ではないので厚かましいお願いと思いつつもこの講習会への参加を澤田氏にお願いしました。その理由は、まず澤田氏が木綿の良さを伝えていこうと積極的でいらっしゃる事、そして中綿には100%綿を使用する事にこだわっていらっしゃる事・・こういう考えを持った方が行う講習会とはどんなものか。そしてこの講習会に参加していらっしゃる方々がどういう方たちなのか興味があったからです。 「ええ!ぜひどうぞ!楽しいと思いますよ」という澤田氏の電話での声に安心して当日会場に向かいました。当日は雨にもかかわらず会場は活気があり満員でした。

「うわあ・・・参ったなあ」私は参加されている方が全員女性であることに少々気まずく なっていました。しかし澤田氏の「原田さん生地を選んではじめましょう」と言う一言がきっかけで序々にはじめての座ぶとん作りに集中していくのです。 澤田氏が作業ごとに参加者を集め、実技を見せながら次の作業を説明していきます。そして澤田氏はじめ区内の寝具店の方々が細かく生徒のところをまわり指導していきます。 作業中に私の横にいた主婦の方は「木綿が打ちなおし出来るなんて素晴らしいのに私の世代でも知らない人が多い事に驚きましたよ。」と話されていました。「だから他の人もどんどんこの講習会に誘いたいんですよ」

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澤田氏に角を教わる

さて座ぶとんの方ですが綿がなかなか思い通りに切れないのです。ただ適当に長さを合わせて切ってしまうと完成時にでこぼこしていることが分かります。またこの座ぶとんも、通常の「蒲団」と同じで角が命です。この角をしっかり整えないと綿が引き締まらず後に崩れてしまいます。この角作りが一番職人の実力が出るところとあって、素人にはなかなか難しい作業です。 私は澤田氏に助けていただき、どうにか角も出来て座ぶとんが完成しました。澤田氏のおかげできれいに出来た座ぶとんを見て私は素直に感激しました。そして小さい座ぶとんでさえ綿の型作りが難しく、また角の作りや綿の切り方、敷き方で綿の形が変わってしまう事に驚きました。 澤田清子さん 澤田氏に角を教わる。

講習会が終わった後、澤田氏のお店にお邪魔させていただきました。澤田氏に作っていただいたお茶と御菓子を頂きながら世間話をしました。さっきまでとは違い澤田氏は主婦の顔になっていました。澤田氏は実は海外産の木綿だけではなく要望があれば日本の木綿でも蒲団を作っています。この綿は鳥取地方を原産地とする木綿で「弓ヶ浜」という場所で育ったものです。国内の寝具業や紡績業は綿花を全て海外諸国から輸入しており、国内での木綿栽培は統計上、数字には出ていません。しかし今でも「和綿」と呼ばれ、こうしてわずかですが栽培されています。品質は昔のアジアの方から在来したデシ綿に似ているそうです。しかしデシ綿でも澤田氏曰く「相当高級な格のデシ綿に近い」といいます。澤田氏だけでなくいくつかの寝具店さんもこうした考えに同調し積極的に動いています。

「私の夢は国内栽培の綿花が更に増えて昔のように日本人がほとんど国産綿で作られた蒲団で寝ることなんです。」と話された時の澤田氏はまた先生の目に戻っていました。 こんなに木綿を愛している方がここにもいらっしゃるんだ!と感動しながら帰路につきました。 次回は埼玉で活躍されている製綿工場について書きたいと思います。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2002年6月に執筆されたものです

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