九代目のひとりごと

17.育児をして知ったこと・・・日本はバリアフリーがまだまだ足りない!

家内のお腹の中にまだ我が息子がいた時、私は病院が開催していた「両親学級」に参加したことがある。父親としての実感が全くない頃に、看護士さんたちに「さっパパ達もやってみましょう」なんて言われながら赤ちゃんの人形を使ってお風呂に入れたり、おむつを取り替えたり、父親同士で陣痛の時はどのような対応をしたらいいかなどをディスカッションしたりするのだが、男性諸君は皆、照れながら参加していたのを今でも覚えている。

その時に何か発表するコーナーがあったのだがある奥さんが「バスなどに乗ると具合が悪くて優先席に座っていたのに、中年の女性が目の前に来て席を譲れとばかり立っていたり、逆に健康そうな青年が優先席に座っていてこちらが譲ってもらいたいのにお腹が大きくないから妊婦と分かりにくいようで、すごい辛かった」と言っていたのが印象的だった。

そういえば以前ラジオで妊婦さんと分かるシールを作り世に広めようとしている主婦のインタビューを聴いたような気がするが、最近「バリアフリー」という言葉が広まり駅や街中でも体にハンディを持つ人の移動などを容易く出来るような環境作りが進められている。しかしどうも妊婦さんや子を持つママさん達にはまだまだ不自由さがあるようだ。

日本は少子化が進むのを理由に子供や乳児に対する諸々の費用を削減しようと進めているが、どんな時代になろうが子供は誕生し続けるのである。その当たり前の感覚がないのだろうか。

自動車に初心者やシルバードライバーと分かるステッカーが義務化されているのに妊婦さんと分かるシールをどうして広めることが出来ないのか。主婦一人がいくら頑張っても限界がある。国が動けばすぐに広まるのになぜ思いつかないのか。

いまだに子供が多い百貨店やアミューズメント広場でも分煙のないレストランもあるし、歩きタバコの真後ろにベビーカーを持った主婦がいると恐ろしくなる。そして都内は特にベビーカーが通れない歩道が多いことに驚く。段差も多いし、道路はでこぼこだし、ガードレールがない場所も多いのでスリル満点の世界だ。家内なんてベビーカーで子供を散歩に連れていくと「車椅子の人はもっと大変なはずよ」といつも話している。電車で移動する人は例えば駅だって階段やエスカレーターなんてベビーカーを持っていれば絶対無理だしそこにエレベーターがあったとしてもベビーカーは入りにくいし、改札口だって通りにくい。

また子供に病気はつきものなのに、ある病院の偉い先生は僕らの前で「まだまだこんなに子供はいるのに国は小児科の看護士を減らして高齢者の多い科に異動させろと言っている。不思議なもんだよ。大人が増えるから子供への対応を怠けろというものだよ」とぼやいていた。

そういえば我が家のベビーカーはフィンランドのめずらしいものを購入した。値段的にも国内や海外の人気ブランドに比べれば決して高いわけではない。しかしこのベビーカーは大人と同じ目線の高さに調節できるので例えば通常のベビーカーに比べて道路のホコリや車の排気ガス、タバコのもらい煙などを吸うリスクが少なくなる。また両親が食事をする時も同じ視線だと子供もぐずらないで済む。百貨店の中を歩くといまだにジロジロ見られるほどインパクトのあるベビーカーなのだが、子供の体を考えると実に合理的なものだと思う。確かに自分もいつか年を取るし親の事を考えれば高齢者に対する環境作りは重要ではある。しかし子供も大事だ。両方に対し極端になってはいけない。日本は先進国なのにたまにそう思わない事がある。今回ホームページで書いているが縁あってフランスに行くことになった。フランスも先進国であるが子連れの家族に対して優先的な対応を取ると聞いている。真実かどうか我が息子を連れていくので確かめてみようと思う。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2004年12月に執筆されたものです

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