九代目言聞録
28.腰痛ピンチ!おたふく助けて!~超快適と腰痛・・・・ 弊社のふとんをこれからどうする~
「最高の寝心地」と「腰痛」
5年前に僕はおたふくわたブランドを復活した。おかげさまで多くの方々が手づくりの綿ふとんを買ってくださった。5年が経過したのでそろそろ打ち直しの要望も出てきた。
復活してから3年ぐらいまではお客様にアンケートなどを取ってふとんの状況をこまめに聞いてきた。しかし最近ではそれをすることが出来なくなっている。打ち直しの目安であり復活5年目の今こそ聞かなければいけないのでは。そう感じている。
当社のふとん打ち直しを考えてくださっているのか、それとも木綿ふとんに懲りて新しい商品を購入しているのか、色々不安になってくる。特に敷ふとんが顕著に出てくる。敷きにはインド綿を入れている。インド綿は太い繊維でコシがあるのだがへたりやすい。しかしそれ以上はへたらず何とも言えないぺちゃんこ感がある。ポリエステル綿を入れてないのでもちろんカサが出にくいしインドに限らず昔から敷ふとんはこのように短繊維の綿を入れているのでせんべいふとんと言われる所以である。昭和初期の頃は国内の綿を使用していたが日本の綿もインドに似て繊維が短くコシがあった綿であった(綿のルーツもインド方面に近いのでそうなのであろう)だから昔は2枚敷きで寝ている方が多かった。
へたることを知っていたのでそうしていたのだ。確かに2枚で寝ていればあまり日に干さなくても長い間新品の1枚敷と同じぐらいの厚さで寝ることが出来る。
実は購入してくださったお客様の中でよくご贔屓にしてくださる方や共通の趣味などがあってプライベートでも親しくさせていただいている方々が何人かいらっしゃる。ふとんについては本音で感想を言っていただくのだが「最高に寝心地が良くて素晴らしい!」と恥ずかしいぐらいお褒めの言葉を言ってくださる方と「木綿のぺちゃんこに慣れていないせいか腰が痛くて」という方もいた。
僕は復活する前から純綿でふとんを作ると腰痛になる人がいると聞いていた。しかしこれは何も木綿ふとんに限ったことでなない。換言すれば木綿ふとんで寝ていた人がベット、マットレス、低反発に慣れていない人がそれらに寝たら腰痛になったというご意見も聞く。
つまり長年使ってきたふとんを変えれば当然体もそれに慣れていないので驚くのだ。
木綿ふとんに慣れていない人は確かに驚くだろう。購入時はあんなにカサがあったのにみるみるうちにせんべいふとんになるからだ。しかし僕はそれでも木綿ふとんで腰痛になったという人を少しでもゼロにしていきたいのだ。
多大な影響を与えた
日干しとストレッチ
実は僕は数年前ぎっくり腰になったことがある。ぎっくり腰は確かに癖になる。
それからというもの少しでもその予兆があると動きがつらくなるのだ。中学、高校時代とラグビーをしていて、大学に入ってから現在まで週に2~3回は早朝または深夜ジョギングとウェイトトレーニングを欠かさずしているのだがトレーニングのスクワットをした次の日に当時2歳の息子を抱いた瞬間襲ったのだ。スクワットは最近ではかなり重さを抑えているが当時は100キロ前後でやっていた。
だから寝る前はストレッチをしているようにしている。するしないでは翌朝の状態が全然違う。僕はもう何年もぺちゃんこの木綿ふとんで寝ているが自分の慣れたふとん以外で寝るとストレッチをしても中々寝付けない。自分の商品を自賛しているのではなくやはり慣れというものがあるから体を管理することで少しづつ改善できるのではないかと考えるのだ。
木綿ふとんだけではなく新しい商品を購入して腰痛になった時、試しに自分に合うストレッチをしてみてほしい(方法は専門ではないのでご勘弁を)就寝前にそれをすれば多少は改善できないではないだろうか。それでも解決しない場合は相談するべきだろう。
僕は週に1度しか干さない、あまりふかふかのふとんが好きではない。枕もそば殻を使っている。ホテルに良くあるふかふかの枕と羽毛ふとんなどはどうも寝付けない。だから自分の家のぺちゃんこ綿ふとんが好きで仕方ないのだ。
木綿ふとんを購入される方で特に敷きふとんの方には僕は「ぺちゃんこになります」と話している。だから2枚敷きや打ち直しについてもなるべく説明するようにしている。
そして木綿ふとんが好きな方には2つのタイプがいらっしゃる事も話す。
日に干してふかふかになるのが好きな方、僕みたいにあまり日干しせずぺちゃんこが好きな方、だからタイプを聞いておかないと最高の寝心地が腰痛になる場合もあるのだ。
しかし木綿ふとんは奥が深い、僕はまだまだ研究の余地があると考えている。だから僕は死ぬまで木綿ふとんについて考えて動いていくだろう。どうしたら好きな人が全員満足してもらえるか。頻繁に日に干さなくてもカサが出る、へたりにくい、打ち直しの時期が延ばせる、そして年配の方々が楽に持てるほど軽い。
色々木綿ふとんについて考えるときどうしてもポリエステルの話が出てくる。ポリエステルを混ぜたほうがいいとアドバイスをしていただく方も多い。
確かにポリエステルを混ぜるとカサも出て、配合率によっては純綿より安定感があるのだ。それは認める。しかし僕はどうしてもそれをしたくない。例え数パーセント混ぜても純綿ではなくなるからだ、偏屈と言われるかもしれないが僕は江戸時代から続く木綿ふとんをさらに完成度の高いものにしていきたい。
だから僕の中でこれからもポリエステルを入れることはありえないのだ。僕にとっては江戸時代にポリエステルを入れていたの?ということになる。
確かにお客様のニーズや時代を考えたという点ではすばらしい繊維である。軽いしカサも出るし、便利な繊維である。
だが催事などで立っているとお客様のほとんどが「綿100%なの?」「混ぜていないわよね?」と聞いてくる。ありがたいことに純綿100%が好きなお客様はまだ多いのだ。それは僕にとって本当に励みになるのだ。
今、考えていること。
僕は数年かかるかもしれないがどうやれば軽い綿を作れるか、そしてカサが保てていけるか必死に考えている。そしてへたった後、例えばミニざぶとんのようなものを作りそれをふとんの腰部分の下に敷くとか穴あきの敷きふとんを作りその穴にざぶとんを交換して入れられるとか、対策を考えている。
持論だが僕は手がかかるほどいい人生を送れると思っている。育児でも趣味の車でもうちの猫でも。手がかかるほど愛着を持ち、そして癒してくれる。木綿ふとんもそうだと思う。干さなきゃならないし、重いし、出し入れしなければいけないし、しかも数年経てば打ち直しをしなければいけない。
しかしだからこそ干した後の香ばしい匂い、そしてふっくらしてくれる、打ち直しから戻ってきたときのあの喜び、また不要になれば捨てずにざぶとんやはんてんなどに作り直す。私たちの先祖はモノを大事にして、木綿ふとんに愛着を持ってくださっていたのだ。
愛着を持てるふとんなんて木綿ふとんだけだと言いたい(笑)
だからといって高齢者に重くて不便さを感じてもらうのは辛い、だから僕は毎日毎日悩みながら最高の木綿ふとんとはどういうものか考えている。時間はかかるかもしれないが自分の完璧な木綿ふとんを作り上げたい。純綿なのに軽くて、カサがあり、コシがあり、やさしい綿ふとんを。
次回は「催事感動物語」について書きます。
※このコラムは2008年7月に執筆されたものです