おたふくわた復活プロジェクト

29.おたふくわたへの思い、そして復活への思い

昨年から「おたふくわた」を復活させたいという思いから各地をあちこちと動き回りましたが、ここまで来れたのは皆様のご協力あってのものだと思います。全く綿やふとんとは縁のなかったスタートでしたので多くの職人さんや経営者の皆さんそして関係者の皆さんと出会えたことは励みにもなりそして復活への大きな足がかりになりました。
弊社が寝具業から撤退して今年で6年目になろうとしています。
当時私は大学生でしたが小さい頃から亡き父がふとんや綿の仕事をしていたことをなんとなく覚えていたので、この会社に入った時それらがなくなっていたのを見て寂しい気持ちはありました。あちこちとふとん屋さんやデパートに行くと綿ふとんはほとんど消えて羽毛・羊毛という商品が店頭に並んでいました。木綿ふとんを否定しているデパートの店員さんの話に矛盾を感じて自分自身でその事実を調べてみようと決意したのがこのコラムを始めたきっかけでもあり「おたふくわた」復活への思いが強くなった始まりでもありました。
先日ある新聞で羽毛や羊毛の試買テストの結果、なんと半数以上が品質表示の内容と実際の中身が違うというニュースが出ていました。(特に羽毛ふとんの試買テストは17点中10点が表示に問題があったそうです)木綿ふとんに代わる新しいふとんとして注目されてきた羽毛・羊毛ふとんもこういった問題のせいで売れ行きが下がってしまうことは業界全体で考えると非常に残念なことです。消費者は更に寝具にアレルギーまた機能や品質について詳しくなり賢くなってきていますので業界全体も更に努力をしていかないと全ての寝具が疑われてしまうのではないでしょうか。
私は木綿ふとんの長所や欠点を色々学びました。きちんと手入れしないと、質の悪い木綿だといわゆる「せんべいふとん」になりやすいなど欠点もありますが何より太陽や温かい風の中で干すと回復性がある、吸水性がある、静電気を起こしにくい、動物アレルギーの人には肌に優しい、清潔感がある、木綿のあの匂いが心地いいなど長所のほうが多くあります。こういった考えから私は小さいスタートで自分の理想の木綿ふとんを作ろうと思いました。神奈川でふとん屋さんを営んでいる野原氏に頼み手作りのおふとんを作ってもらい自分や仲間に渡して寝てもらいましたが本当に軽くてそして程よい重さに満足しています。また日干しした後の回復性はなんともいえません。
アンケートやメールを読んでいると確かに圧倒的に「羽毛ふとんは軽くて温かい!」という内容が多いのですが中には「羽毛のかさかさという音がいやだ」「軽すぎて嫌だ」「匂いが嫌だ」という内容や「木綿のあの重さが安心感がある」「なんだかふるさとの事を思い出す」など嬉しい内容のものもあります。こういった意見を見ると「まだ木綿ふとんを必要としている人はいる」と思い「ゼロにならないなら売ってみようか」という気持ちになりました。昔より軽い木綿ふとん・・そして何よりいい綿で丁寧に作ることできっと最高のふとんが作れるのではないかと思います。ある若い女性の方から「木綿ふとんならおたふくわたが最高だとうちのおばあちゃんが話していました」と涙が出るようなメールが来ていました。もう一度そういうふとんを作りたい。天保の創業時のように「小さいスタート」から始めたいと私は決意しました。
今の時代の逆を行くような「木綿の復活」。私はこれにあえて挑戦しようと思っています。
次回は野原氏との再会について書きたいと思います。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2003年4月に執筆されたものです

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