九代目のひとりごと

1.おたふくわた復活

いよいよおたふくわを復活させる。学生時代から色々な事を夢見て、それを実現させようと親や周囲に迷惑をかけてきたが、まさかその時は意を決しておたふくわたブランドの「木綿ふとん」を売るとは想像もしていなかった。

幼少の頃におたふくの顔を見て少々怖がっていたのを覚えている。そして中学生ぐらいになるといわゆる「ダサイ」ブランドと思い、この商標に対して恥ずかしいという気持があった。その後色々な経験や勉強をして再びこの顔を見るとようやくこの顔がいかに長い時間を経て人々を癒してきたのか少しだけ理解してきた。当社の主力商品である綿に「おたふくわた」とつけた先祖の原田重吉氏には本当に頭が上がらない。このネーミングは見事当時の人々の心を一気に惹きつけた。

「結婚するときはおたふくさんのおふとんを作る」そういって沢山の人々がめでたいものとして婚礼ふとんを作っていただいた。
現代は驚くほど多種多様の寝具がある。高級というイメージがあった木綿、真綿そして羽毛ももはや消費者から見たら贅沢品ではない。

中には「寝られればいいじゃないか」と思う人もいる。それはそれで構わないし、ある意味正しくもある。消費者は過剰な広告に飽きて本物か否かを自分の目で見ている。だから消費者の方が寝具に詳しい時もあるし、またあれこれ書いたところで「寝られればいいじゃないか」と一蹴されればそれまでだからだ。
ただ世の中には「こだわっている」人がいる。

時計や靴やワイシャツ、カバンなど・・。ぱっと人には目につかないけど例えば愛車にこだわる人はタイヤにこだわるし、排気量をいじる人もいるし、ペダルを変える人もいる。食器を洗うときに洗剤やスポンジにこだわる人、ガーデニングでシャベルやジョウロにこだわる人、おしゃれな「こだわり」の人がいる。

おたふくわたはそこを目指している。ふとんにこだわりを持つ人、多分・・いるはずだ。
カバーをしてもさり気なく透かして見えてくるでしゃばらないシンプルなデザイン、今回のデザインはシンプルだがテーマを「ジャポニズム」にした。障子や格子、貨幣などをイメージして四角の枠を多くいれてみた。次回もテーマを持ったデザインにしたい。革新的な花柄か動物か風景か・・色々考えている。

何よりも自慢なのが中綿。エジプト綿はふっくら感がないかもしれないが繊維が相当長いいので生地にびったり付く。肌さわりは真綿に近いかもしれない。包みこまれる感覚がするので羽毛にひけを取らない。

今回のインド綿はめずらしい綿花の形をしたものだが短繊維なのでコシがしっかりしている。インド綿はコシがしっかりしているほど高級なもの。寝具は他人には見えにくいが毎日使うもの。こだわりを持つ人に満足してもらえるようなふとんにすることが私と職人の切なる思いだ。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2003年8月に執筆されたものです

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