おたふくわた復活プロジェクト

27.木綿を愛する商社マンメルクロス株式会社の鳥居氏

メルクロス株式会社は日本橋に本社があり主に食品、リビング品、工芸品などを扱う有名商社です。その中で寝装品を中心とした卸業を行うリビングユニットというグループがあるのですが、その中で綿の輸入などを担当している鳥居正明氏とは以前、知人の紹介で一度食事をしたことがありました。鳥居氏は気さくで優しいだけでなく面白い話や体験談を沢山される方なのです。また再会したいと思っていた私は先日、日本橋のメルクロス本社にお邪魔することにしました。鳥居氏は応接室に入るなり「元気でしたか?あの時食べた大根サラダはおいしかったですね(笑)」といきなり言い出したので私は思わず笑ってしまいました。

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メルクロス株式会社の鳥居氏です

鳥居氏は仕事で度々綿の原産地であるインドへ行っています。昨年秋にも行かれたそうです。私もいつかはインドへ行きたいと思っているので、私は興味深く話を聞きました。 「インドはアメリカみたいに企業が広大な畑を持っているのではなく日本の農家のように個人が畑を管理して綿を作っているんです。だからその綿を取りまとめる仲買人がいるのですが、この仲買人というのはその地区では絶大な力を持つボスなんです。農家から集めた綿を今度は輸出担当の会社に売るんですよ。だから日本の農家のシステムと非常に似ています」と話をしながらガンジーのようなその仲買人の写真を見せてくれました。 畑から綿を取り出したり、袋に入れる女性達は皆、青、赤、黄色などのショールみたいな布を頭からすっぽりかぶり民族衣装のようなドレスを着て作業をしています。 「この衣装がくせものなんですよ。この布がほつれて綿の中に青や赤の色がついた糸がたまに入って来るんですよ。綿が白いから尚更目立つじゃないですか。だから日本に着いたらその糸を取り除くのが大変なんです。だから一度Tシャツ、ズボンのような普段着でやってくれないかと話したらインドではこれが普段着だと一蹴されたんですよ(苦笑)」と話されました。確かに写真を見るとカラフルな衣装を着て作業をしています。彼女達はカメラに向かって実に楽しそうな顔で作業をしていたのが印象的でした。「カメラがめずらしいからでしょう。けれどよく安い賃金であそこまで働きますよ。実に一生懸命働きます」しかし綿の発祥の地とも言われるインドでは深刻な問題が起きています。 「最盛期には32万俵ぐらい綿が入ってきたのですが今では2万俵ぐらいしか入ってきません。日本では敷ふとんとして使われていたインド綿ですが、木綿ふとんの需要などが減ってきたのも原因でしょうね。インドではそもそも綿を作る農家が減ってきたんです。それはなぜかというと灌漑用水が広がって色々な農家で食物を作れるようになりました。彼らは綿よりも食物のほうが早く収入を手に入れられるので綿の生産は自然に減ってしまいました。」と少しさびしそうな顔をしながら話されました。 私は最高級のインド綿は本当にコシがあって肌さわりも良く、敷きふとんとしては最高の繊維だと思います。木綿ふとんの需要は減っているとはいえ今でも木綿ふとんは通信販売などで好調な売れ行きを示しています。

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こんな綿花みたことありますか。
インドでは最高級といわれるメガライの綿です。

インドでは過剰に農薬を撒くとか枯葉剤を使うことはしないので、オーガニックコットンに近い状態なのではないかと思いました。鳥居氏はうなづきながら「そうなんですけどね彼らにはそういった表示などは興味がないしあまり詳しくは知らないんですよ」と答えてくれました。 「でもメガライ州やアッサム州などの綿には最高のものが沢山ありますよ。原田さんはもっとこの辺りの綿を調べて、人に説明が出来るぐらい勉強したらこの綿で寝てみたいと思う消費者は沢山出てきますよ。」と話してくれました。 普通皆さんが見る綿花と違ってこの辺りの一部でしか取れない最高の綿花があります。 画像を見ると分かりますがぶどうのようにひとつの花にいくつもの種がくっついた不思議な綿花です。そしてこの綿は一つ一つがコシがあって弾力性があります。 このコラムでは書ききれないくらい鳥居氏はビジネスとしてだけではなく木綿が本当に魅力的だという知識を沢山持っています。氏がおっしゃった通り、このすばらしい綿をいかにうまく人に伝えられるのかが私の今後商品を売るための課題だと思います。
次回は和田哲さんとデザインを作った話について書きたいと思います。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2003年3月に執筆されたものです

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